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ISSUE 05

病状の進行が早く劇的に本人と家族の人生が変わる
「若年性認知症」

65歳未満で発症する認知症のことを「若年性認知症」と⾔います。全国の若年性認知症の⼈は 37,800 ⼈(2009 厚労省)有病率は人口 10 万人あたり 47.6 人と推計されて、平均の発症年齢は約 51歳です。現役世代での発症になることから、職場では認知症の人に仕事を任せることは出来ないと判断され、本人に就労意欲があるものの、解雇や退職、休職となる人が約8割を占めています。物忘れはあっても身体は動くものの、職場では若年性認知症の人の能力を生かした業務が与えられることは少なく、働くことができなくなることが多いのが現状です。

若年性認知症になる人たちは、子どもが高校生や大学生などで一番お金が最もかかる時期であることも多いです。そのため、子どもが進学をあきらめたり、学費が支払えなくなって学校を辞めざるを得なくなることもあります。また、住宅ローンが支払えなくなったり、人によっては親の介護と重なることもあり、家族への影響は多大なものになることが多いのが現状です。

若年性認知症の発症年齢割合
若年性認知症の発症年齢割合
若年性認知症の人の雇用継続率
若年性認知症の人の雇用継続率

出典:埼玉2020調査

  • 「相対的貧困」とは、その国の文化水準や生活水準と比較して、大多数よりも困窮した状態のことを指します。

私たちが関わってきた
若年性認知症になった人たちに起こった問題

  • 01

    若年性認知症になって、うまく仕事をすることができなくなり、解雇によって収入が大幅に減少。

  • 02

    介護があるため、配偶者も十分働けなくなり、家族全体が生活困窮の状況に陥る。

  • 03

    仕事がなくなったため、子どもの学費を支払うことが出来ず、高校、大学等への進学に問題が出る。

  • 04

    感情のコントロールができなくなることもあり、本人の意志とは関係なく、家族や近隣住民との関係が悪化する。

  • 05

    若年性認知症は進行が早いため、本人と家族の気持ちは追いつかないまま、病状悪化、トラブル、収入減少など、多くの問題が一気に押し寄せてくる。

  • 06

    配偶者が長時間働かざるを得ず、子どもが若年性認知症の親の介護をしなくてはならない為、学業や就職活動に影響が出る。

DATA
突然の若年性認知症の診断と
支援がない現状

働き盛りの現役世代のため、疲れやストレスと考え、自身で「若年性認知症」に気がつくことは珍しく、 9割近くの人が突然の告知をされます。 高齢者の認知症と比べ、自身での理解力が比較的保たれていることも多いため、大きな不安や悩みを抱えることが多いのも特徴です。そのため、 相談先や支援先を探す方も多いのですが、相談対応や支援を行っている若年性認知症専門の機関や悩みを打ち明けられる、当事者・家族同士の交流の場などが身近にあることはほとんどない のが現状です。

一方、支援を受けられず、家にいることが多くなりますが、若年性認知症の症状が進むにつれ、家でも任せてもらえる役割が急激になくなり、社会からも、家庭からも必要とされないという状況に自身が生きている意味すら感じなくなる人も少なくありません。

若年性認知症に気がついたきっかけ

若年性認知症に気がついたきっかけ

若年性認知症の人がいる事業所

若年性認知症の人がいる事業所

若年性認知症の方に関する対処すべき問題

  • 01

    社会・人・家族からも必要とされなくなる。

  • 02

    若年性認知症を重視した福祉サービス提供組織がごく一部しかない。

  • 03

    当事者や家族が交流する場がない。

2倍以上の速さで進行する
若年性認知症本人
家族の気持ち

若年性認知症の人達の多くは、まだまだ人から必要とされたいと思っているのですが、症状の急激な進行により、本人の中では一人で出来ないことが増えてくる辛さがあります。脳の萎縮や物忘れだけではなく、感情のコントロールが出来なくなり、興奮し怒鳴り始めることもあります。介護する家族にとっては、何度も同じ話しを聞く辛さや入浴や排泄介助等の身体介護、気分の起伏が激しい時は対応が出来ず、医療機関や施設を頼るほかありません。約2倍のスピードで進行するといわれている若年性認知症本人と家族を早めに支援することが必要ですが、わが国には身近に支援体制が整っていません。本人や家族の気持ちに寄り添える専門の機関によるケアや相談先の整備が急務であります。

若年性認知症の人の身体状況について
若年性認知症の人の身体状況について

CASE
若年性認知症の人が『子ども食堂スタッフとして活躍する場所』

急な宣告。社会や家族から戦力外の扱いを受ける辛さ。

猪鼻秀俊さん(本名)は、建築設備会社の営業マンとして働かれ、人や社会の役に立つことが好きで、少年野球のコーチなども引き受けていらっしゃいました。57歳のある時、突然、上司から「最近、取引先から君のミスが多いと言われているんだよ。一度、病院で検査してみてはどうかな?」と言われました。自身では何も問題を感じたことがなく、「この人はなんで、こんなことを言うんだろう?」と思いながら、病院に行きました。一度目の検査では、問題なかったものの、念のために、再度検査をすると「アルツハイマー型若年性認知症」と診断されました。「まさか自分がこんな若さで認知症になるとは」と、目の前が真っ暗になりました。猪鼻さんが働かれていた職場は理解のある職場だったため、解雇となることはなく、病気と付き合いながら仕事ができるように、営業から総務に異動となりました。若年性認知症になって、まず困ったのが、マニュアル等に書いてある文章が理解できなくなったり、漢字などが思い浮かばず、うまく文字を書けなくなったことでした。そのため、新たな仕事を覚えることや1つ1つの仕事をうまくまわしていくことも、今までよりずっと大変になりました。また、車が大好きで、やっと手に入れた憧れの車を買ってまだ1年の状況でしたが、運転を続けることができなくなってしまい、手放すことになりました。その後、職場の人に助けられながら、60歳の定年とプラス再雇用1年で働くことができました。しかし、猪鼻さんは病気さえなければ「本当はもっと長く働きたかった。人とつながっていたかった。」と言われていました。退職後は、認知症になってもできることはあると、オカリナの練習を始め、ある時、認知症の方やご家族、関係者の方々が集まった集いで演奏をしたところ、多くの方が喜んでくださいました。それがきっかけとなり、生きがいとして続けるようになり、認知症が進行している現在においてもオカリナ演奏はどんどん上達し、周りの関係者みんなが驚いている状況です。(現在、これでいいのだバンドを発足し、全国各地で活動中。)
そのような生活をされている猪鼻さんが感じられた問題は、若年性認知症の人が利用できるサービスや、同じ病気の当事者同士の出会いや交流ができる場所が身近にないこと、そして、自分達が社会の役に立てる場所がない、人に必要とされる場所がないということでした。若年性認知症になると、社会だけではなく、家でも必要とされない、頼りにされなくなり、それはとても辛いことでした。
そこで、見つけられたのが、本会のけやきの家です。けやきの家では、若年性認知症の人の支援をしています。当事者同志の情報交換もでき、何より、認知症の人が、子ども食堂でメニュー決め、買い物、調理などを行なって、ご飯を食べさせ、人の役に立つことができます。また、一度休んだ時、活動のメンバーから「前回はなんで休んだの?猪鼻さんがいないから大変だったんだよ。」と言われて、自分の力を必要としてくれる人がここにはいると感じて嬉しかったそうです。また、猪鼻さんがリーダーとしてメニュー決めをした日にタコライスを4杯おかわりしてくれた子どもがいたときや、野菜嫌いだった子どもが「美味しい。美味しい。」と根菜カレーを食べてくれたときも、「嬉しい」と喜ばれていました。今では、けやきの家は、猪鼻さんが子ども達や仲間から必要とされている居場所になっています。

子ども食堂スタッフの写真

IMPACT
若年性認知症の方のための
私たちの取り組み

若年性認知症の人に社会的役割があり、
本人と家族にかかる精神的・身体的・経済的負担の軽減ができる社会の実現

若年性認知症の社会問題について、私たちは「若年性認知症の人に社会的役割があり、本人と家族にかかる精神的・身体的・経済的負担の軽減ができる社会の実現」という目標を掲げ、「解決」に繋げるための計画を作成しています。

  • 若年性認知症の課題
  • 社会から必要と
    されなくなる
  • 家族から必要と
    されなくなる
  • 介護や病気の進行にかかる
    精神的負担が大きい
  • 通える範囲で若年性認知症に特化した支援を受けることができない
  • 退職・解雇による
    減給の家計への影響
  • 介護にかかる身体的負担が
    増大している
  • 病気の進行が速く
    家族の精神的負担が
    増大している
  • 介護や医療による
    経済的な負担が増大している
  • 学生である子どもが
    親の介護をしている
  • 三芳町社協の取り組み
  • 社会から必要とされていると感じている若年性認知症の人の増加

    若年性認知症のお仕事促進活動・当事者による講演活動・若年性認知症への理解のある会社普及活動・若年性認知症対応型デイサービス・若年性認知症マーケティング活動

  • 家族から必要とされていると感じている若年性認知症の人の増加

    若年性認知症の力を生かした仕事活動・若年性認知症ライフプランブックの作成・若年性認知症との付き合い方相談

  • 病気に対する不安軽減の活動

    ピアカウンセリング活動(若年性認知症対応型デイサービス)

  • 若年性認知症の人の支援活動

    若年性認知症対応型デイサービスセンターの運営及び普及活動・財政支援の仕組みを作るアドボカシー活動

  • 経済的な不安の軽減(家計)相談活動

    若年性認知症の人と家族へのお金の相談活動・若年性認知症ライフプランブック

  • 家族の介護負担を減少する活動

    デイサービスでの身体介護・若年性認知症ライフプランブック・
    外出支援サービス

  • 家族の精神的負担を減少する活動

    若年性認知症家族の交流会・若年性認知症対応型デイサービス・若年性認知症ライフプランブック

  • 経済的負担を減少する活動

    若年性認知症お金の相談活動・若年性認知症対応型デイサービス介護中に働ける家族・若年性認知症の力を生かした仕事活動

  • 親の介護をする子どもの減少活動

    ヤングケアラー対策活動・
    小中学生向け若年性認知症授業(福祉教育プログラム)

ACTIVITY
若年性認知症の方への活動一覧

  • 若年性認知症になってもその人が望む日常生活を支援するための活動

    • 若年性認知症対応型デイサービス

      若年性認知症の方が、他の利用者(仲間)と収入を得られる事業と社会貢献活動を実施します。また、認知症の方が外出する事により、家族の日中の介護負担の軽減を図ります。

  • 若年性認知症の方が仕事(有償ボランティア活動)や社会貢献活動を通し、
    自己肯定感を得られる活動

    • 若年性認知症の方のお仕事促進
      活動

      若年性認知症の方が、収入を得られる仕事(有償ボランティア)を通し、生きがいを持って日中を過ごせる活動を行っています。
      【具体的な仕事】
      畑仕事・野菜販売・民家の掃除・ハウンドケーキの梱包 等

    • 若年性認知症の方の社会貢献促
      進活動

      若年性認知症の方が、食の提供が必要な子ども達に子ども食堂の活動を行っています。献立を考え、買物、調理などすべての工程を若年性認知症の方が担っています。

  • 若年性認知症の方を理解してもらい、
    受け入れられる社会をつくるための周知活動

    • 若年性認知症当事者による講演
      活動

      若年性認知症当事者と家族が、その人らしく生きる事ができる社会の実現を目指し、理解の促進を行う活動を行っています。
      【これまでの実績】
      大学・企業・地域住民・福祉施設・医療従事者 等

REPORT最新の活動レポート

  • 『一日一食で大丈夫』‐おなかが空いたと言えない子達‐

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    子どもの貧困 若年性認知症の人の社会的役割
  • 社会から必要とされなくなる恐怖 -若年性認知症-

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