REPORT
活動レポート
気にかけてくれる人いないが為に命を落とす人たち
「2日前から何も食べていない、助けてほしい」と、Aさん(70代)から連絡がありました。連絡を受けAさん宅を訪れると、やせ細ったAさんが布団の上に佇んでいました。まずは持ってきた食べ物を勧めますが、固形物は喉を通らず、スポーツドリンクを一口飲むのが精いっぱいの状態でした。直ぐに病院に行く必要があると感じ、救急搬送を勧めますが、「病院には行きたくありません」と拒むAさん。しばらく話をしていると、身の上話をはじめてくれました。50年以上前に田舎から出てきて関東で働いていましたが、友人と呼べる人はできず、結婚歴もなく、田舎の両親・兄弟はすでに他界し、他の親族とも交流がない為、一人で暮らしてきたこと。1年前、体調不良で病院に行き、癌の可能性を指摘され、早く検査を受けて、治療してもらった方がいいと思ったが、一人暮らしで治療を受けながら生活ができるのか、治療に耐えることはできるのか、様々な不安と恐怖が襲ってきたが、相談する人いないためどうする事も出来ず、ずっと家で過ごしてきたことが分かりました。「このままAさんを放ってはおけません。すごく心配です。付き添いますから、一緒に行きましょう。」と何度も説得し、「一緒に行ってくれるなら、病院に行きます」と言ってくれましたが、救急車は近所の迷惑になるから呼ばないでほしいと言われ、社協の車で病院に行きました。
Aさんと一緒に病院に行くと、末期がんであることが分かり、病院関係者から長く生きられない事を告げられ、Aさんは1週間後に病院で亡くなりました。私たちが関わる方の中には、Aさんのように体調が悪くても病院に行かず、連絡を受けた時には手遅れとなっており、病院で亡くなってしまう人にたくさんであってきました。Aさんは自宅での孤立死とはなりませんでしたが、もっと早く連絡が取れていれば違う結果につなげられたのではないか、と毎回悔しさがこみ上げてきます。
孤独・孤立状態にある方に共通しているのは、不安や困り事を相談する人を持たず、生活課題や病気を抱え、ただひたすらに不安と恐怖にさらされている方がたくさんいらっしゃいます。Aさんも、もっと早くに自分のことを相談できる人とのつながりを持っていれば、Aさんのことを心配して寄り添ってくれる人がいれば違う結果を歩むことができたかもしれません。私たちはこのような悲劇を繰り返さない為にも孤独・孤立に立ち向かうため、助けてほしい時に声をかけられる、人と人がつながれる取り組みを行っています。Aさんが本会に連絡をするきっかけとなった福祉新聞の配達による見守りや地域に知り合いがいない人が集まれる居場所づくり、いざという時に相談でき、迅速な支援に結び付けられる相談受付体制など、私たちは孤独・孤立がもたらす課題にこれからもまっすぐに立ち向かっていきます。
関口 和宏