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REPORT

高齢者の孤独・孤立 認知症高齢者の生活問題 生活困窮世帯

親の介護を抱えながら子育てをする母子世帯の貧困

86%就業しているのに、貧困から抜け出せない母子世帯

 貧困の状態にある子どもの相対的貧困率は、2021年に11.5%となっています。しかし、子どものいる世帯のおよそ1割が母子世帯であり、母子世帯の半数が貧困世帯となっており大きな社会問題と言えます。

 日本のシングルマザーの多くは働いており、就業率が86%を超えていますが、4割はパート・アルバイト等の非正規で働いているため、仕事をしていても貧困状態に陥ってしまうのです。多くの母子世帯は就労と子育て、家事を一人で担っていますが、さらに親の介護も抱える世帯では困窮の状況がさらに深刻となります。

田中さん(仮称)の場合

 田中さん(45歳)は都内に住んでいましたが、離婚を機に一人暮らしの母が住む実家に引っ越し、78歳の母親と3歳のお子さんと3人で暮らすシングルマザーです。子どもの保育園のお迎えや急な発熱等による急な呼び出しにも対応できるように、自宅近くの会社で事務職のパート勤務をし、手取り12万円のパート収入と母子家庭の手当て、母親の年金を合わせて生活をしていました。

  ところが、母親が認知症となったことから状況が一変します。物忘れだけでなく、徘徊がはじまり、何度か行方不明になることもあり、仕事に遅刻したり欠勤せざるを得ないことが頻回となりました。親の介護で田中さんが心身ともに疲れていく中、子どもが体調を崩すことも多くなり病院に連れていくことも頻度が増えました。ひとりで子育て、介護を行う負担から精神的に不安定になり、田中さん自身もうつ状態で仕事に通えなくなってしまいます。頼れる親戚や友達もいなかったため、誰にも相談できず貯金を切り崩しながら生活をしていましたが、ついに限界となり私たちの相談につながりました。

私たちが行ったこと

 相談にきた当時、手持ち金は数百円しかなく生活費に困窮している状況でした。母親の年金と田中さんの給与収入で、なんとか生活を切り盛りしていたのでが、休職となり給与収入がなくなったことで生活を維持することができなくなってしまっていました。私たちに相談しに来たときには雇用契約期間も残り少なく、近々退職しなくてはいけない状況となっていました。そのため、緊急支援として当面の生活費の貸付をおこない当面の生活費の確保をすると同時に、休職期間中の生活費を確保するため傷病手当金の申請を行い、傷病手当金を利用したあとは失業保険の申請援助も行いました。

 その後、認知症の母親については、介護保険制度の申請も行い現在は週5日間デイサービスにも通うようになりました。母親の介護負担も軽くなったことから、精神的な不調も落ち着き、再就職に意欲的となっていきました。ハローワークの制度を利用し介護系の資格取得をし、現在では自宅付近の介護施設で仕事をしています。事務職時代より収入も増えたため、生活状況は改善されました。

 このように、介護の発生や精神的不調、離職など家族状況や収入状況によって生活が困窮する母子世帯が存在します。困窮に至る理由はそれぞれですが、どのような状況であってもひとりひとりの状況に合わせた対応ができるようにこれからも支援活動を進めていきます。

 

スタッフ 小林友

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