REPORT
活動レポート
アルバイトで貯めた学費を親に使われてしまう子ども達
生活保護世帯で暮らす高校生美樹さん(仮名)の目から涙がぽろぽろと流れるのをみたのは初めてでした。静かだけどしっかりした美樹さんは、小学生のころから社協がおこなう無料の学習塾に通い、高校に入学するときには、看護師になるという夢を持ち、大学入学のための受験費用と入学金100万円をアルバイトで貯めました。受験が近づくと推薦入学のために試験では、論文を書かなくてはなりませんでした。その為に私が出すタイトルの論文を毎日2つ書き上げ、添削する日を続け、3校目の受験で無事入学が決まりました。
貯めていたはずの学費がない
入学金を払おうと母親に預けていた預金通帳をみると、残高がほぼありません。
母親に聞くと、腰に激痛があり働きにいけないため、知り合いに紹介された健康保険がきかない接骨院で、一回1万円の治療を受けるために美樹さんの預金を使っていたそうです。
『身体を治すために使ったのだから仕方ないよね。いつもご飯を作ってもらっているし』と言いながら、ぽろぽろと涙を流す美樹さんを目の前に、悔しさがこみあげてきました。
「子どもがアルバイトで貯めた学費を、信頼して母親に預けていたのにひどい。」と母親に対して、怒りの感情をいだいたのも隠しようのない事実です。
頼れる家族がいないシングルマザーたち
ただ、母親には、頼れる親や兄弟も親戚もいません。非正規雇用で、ダブルワークをしながら一人で二人の子どもを育てていました。時には、もうひとつ仕事を増やそうかと思うと言いトリプルワークをしていました。休みなく働き、身体と心を壊し、生活保護の申請を一緒にしました。早く身体を治したいと思って、受けた治療だったのだと思うと母親を責めることはできないと思いかえしました。もっと、ひとりで子育てをする母や父の話を聞かないといけないと気持ちを新たにする出来事でした。
母親たちに寄り添う
保護者にアルバイトで貯めた預金や奨学金を使われてしまう子は、美樹さんだけではありません。ただ、保護者を責めても問題の解決にはならないから、母子家庭などひとりで子育てをしている人たちが、安心して相談できる環境を作らなくてはならない、とことん寄り添い、パートナーをもたない母親たちの頑張りを認め、大切にしなくてはならないと考え、ひとり親が集えるサロンをおこなっています。
古賀和美