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REPORT

生活困窮世帯

コロナ特例貸付の申請期間を終えて

失業・休業による生活困窮の深刻化

今年の6月、コロナ特例貸付の申請に必要な住民票の取得をお願いしたところ、40代男性のSさんは「60円しかないです…」と力のない声でつぶやきました。Sさんは2年間勤めた三芳町内にある工場の経営がコロナの影響で悪化し、派遣契約を打ち切られたため、手取りで約18万円あった収入が途絶えました。その後、仕事を探すもコロナ禍の中で思うようにいかず、家賃や光熱費の支払いも滞るほど困窮した状況に陥っていました。

国内で最初のコロナ感染者が確認されてから3年近くが経ちましたが、その影響は甚大で、多くの方が生活に困窮し、申請に訪れました。申請者の職業は会社員だけでなく、タクシー運転手や飲食業など多岐にわたり、その中でもSさんのような非正規労働者や劣悪な環境で働く外国人、年金を受給しながらも生活を支えるために働かざるをえない高齢者など、コロナの影響を受ける前から不安定な就労環境で働く方々からの申請が相次ぎました。

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殺到した特例貸付の申請者

新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した世帯を対象とする国の特例貸付制度は令和2325日に受付が始まり、令和4年930日で申請期間が終了しました。三芳町社会福祉協議会にも申請の相談や申込が殺到し、その貸付総額は全国で1兆4289億円にのぼり、三芳町だけでも3億6千万円を超えています。コロナ感染の広がりが私たちの暮らしや経済にどれだけ大きな影響を与えたかを如実に表す数字です。収束の見通しが立たず、特例貸付の申請期間も延長が繰り返され、令和4年930日に申請期間の終了を迎えました。

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特例貸付の現場で感じた葛藤

コロナ特例貸付は、「借りやすさ」と「スピード感」を重視した制度設計だったため申請手続きも簡略化されており、いち早く申込者の手元にお金を届けることが優先されました。また感染予防の観点から郵送による申請方式も導入され、電話での聞き取りのみで一度も対面しないまま手続きを終えることもありました。そのため、これまで私たちが大切にしてきた、相談者から丁寧に生活状況を聞き取り、その人に最適な支援を行うことが困難なケースが増え、「貸付だけで相談者にとって十分な支援といえるのか」というジレンマを絶えず感じてきました。

誰一人取り残されることのない支援に向けて

大多数の借受人が年明け1月に、最長で10年間に及ぶ返済期間のスタートを迎えます。今回のコロナ特例貸付を通じて、社会福祉協議会はこれまで接点のなかった方々と多くのつながりを持つことができました。コロナ特例貸付を利用された方々は世帯状況や就労状況も一人ひとり異なり、物価の高騰なども続く中、返済が困難な方も多く出てくることが予想されます。これからにおいてこそ、社会福祉協議会が取り組む意味が問われ、申請時には十分に行うことができなかった相談者一人ひとりの状況に応じた丁寧な相談支援が求められます。緊急を要する方への食糧支援をはじめ、就労支援や家計支援などの生活の立て直し・安定に向けた支援を丁寧に行っていきたいと考えています。現在、コロナ特例貸付を利用したものの困難な状況が変わらずお困りの方、また返済期間を間近に控え不安や悩みを抱えている方、三芳町社会福祉協議会までぜひご相談ください。

齋藤 拓朗

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