REPORT
活動レポート
郵便物の内容がわからない~認知症高齢者を支える~
わからない郵便物が届くたびに・・・
夫が3年前に亡くなり、一人暮らしを続けていた里子さん(仮名)。80歳を越え、少しずつ認知症が進行していました。里子さんは、ポストに投函される郵便物の内容がよくわかりません。内容が理解出来ない為、ほとんどの郵便物を捨ててしまいます。そして、捨ててしまったことも忘れ、保険の更新など、本来必要な手続きが滞ってしまうことも頻繁に起こるようになりました。半年以上も前の電気代の請求書、昨年届いた同窓会の案内状、毎月届く通販のチラシ、自分にとって重要な通知なのか不要な通知なのか、いつ送られてきた郵便物なのかもよく分からなくなります。結局、ほとんどの郵便物を捨ててしまい、その時にふと目に留まった郵便物や通知だけを保管していました。既に口座振替になっている電話代の領収書が届くと請求書と思い込み、「今月の電話代、支払いにいかないといけないね」と不安や焦りを感じて口にします。
本来、手続きしなければならない事が出来ず、自分にとって不要なチラシや郵便物がたまっていくのです。
ATMの前で右往左往してしまい・・・
生活費をおろすために銀行の窓口に行っても里子さんは自分でお金をおろすことが出来ません。長年使っているキャッシュカードなので暗証番号は覚えています。しかし、ATMで最初の画面操作が分からず、暗証番号を打ち込む画面までたどり着きません。振り込め詐欺を防止する為に注意喚起で出てくるメッセージで、どのようにしたら良いか分からずに混乱してしまいます。窓口で払出しようにも、自宅にある印鑑のどれが銀行印か分からなくなっていて窓口でも払出できず、銀行の職員さんに操作を聞いて何とかATMでお金をおろしています。
出来ること、出来ないこと・・・そして、誰かの支えで出来ること
私たちは認知症が進行する方々など、物事の判断が少しずつ難しくなっている方のサービス利用や金銭管理をサポートしています。里子さんとも一緒に話し合いをしながら毎月の生活費のやりくりを考えて、定期的に生活費をお届けし、郵便物も本人と一緒に時間をかけて整理し、役場に提出するものなど、必要な手続きを支援しています。
認知症の影響により、自分で行う事が難しいことも誰かのサポートで出来ることがあります。私たちは里子さんが不安の中で暮らすことがないように、時間をかけて寄り添い続けています。
小林 和文