REPORT
活動レポート
終活のトラブル・終末期の意向と死後の相続
日本の高齢化率は29.3%(令和6年10月時点)となり、全人口の1/4以上が65歳以上となる超高齢化社会を迎えています。また、65歳以上でのひとり暮らしをしている方も670万人(2020年時点)を超えています。こうした現状の中、終活(しゅうかつ)という言葉が注目されています。NPO等の調査では、60歳以上の方で終活を聞いたことがあると回答した人は約99%と社会に根付いた言葉となりました。※1しかし、終活の第1歩と言われるエンディングノートを取得している人は13%にとどまっています。また、相続等に法的効力がある遺言書を作成している人は、3.5%と、少ない割合となっています。※2終活は、言葉は知っていても「まだ早い」「考えたくない」と、とかく後回しになりがちであり、取り組んでいない方が多いのが現状です。
※1 NPO法人ら・し・さ「第2回 終活意識全国調査 報告書」(2025年7月公開)
※2 日本財団「遺言・遺贈 に関する意識・実態把握調査 要約版」(2023年)

【配偶者あり・子なし・きょうだいありAさんの例】
Aさん(77)は妻と2人暮らしです。生活していくには十分な蓄えもあり、妻と毎日を楽しく過ごしています。ある日、小学校の同窓会に参加した際、終活に取り組んでいる友人に出会い、相続の事や、終末期医療の希望、葬儀の形式など、事細かに考えている話を聞きました。これまでAさんは自分の終末期を考える事は意図的に避けてきましたが、子どもがいない事や妻より先に亡くなった時のことを考えると、いつまでも先延ばしにはできないと決心し、後日、友人に教えてもらったエンディングノートを入手しました。Aさんはノートに従い、資産一覧を作成し相続はすべて妻に行いたい事、友人の連絡先、介護や医療、葬儀の希望などを少しずつ記入していきました。そして、書き進めていくうちに注意書きがある事に気がつきます。
「エンディングノートは財産の事や自分の気持ちを整理し、ご家族に伝える事を目的にしています。これを元に、法的効力のある遺言書の作成を検討しましょう」
しかし、エンディングノートに相続等の希望を記載しているので、遺言書まで作成しなくてもトラブルになる事はないと考えたAさんは遺言書を作成せず、エンディングノートを記載した事だけを妻に伝え、本棚にしまいました。数年後、Aさんは闘病の末、亡くなりました。妻は終末期の医療・葬儀など、エンディングノートに記載されたAさんの意向を尊重して対応しました。しかし、相続の内容で問題が発生してしまいました。エンディングノートには妻に全てを相続させたいと記載されていましたが、子どものいないAさんの相続人は妻とAさんのきょうだいです。法的に有効な遺言書が残されていなかったことから、遺産をすべて妻に相続させたいとのAさんの意向は反映されず、遺産分割を求めたAさんのきょうだいとAさんの妻で遺産分割協議へと発展してしまいました。

この様に、エンディングノートは終活を行う方の終末期や葬儀の希望を記載できることから、家族が本人の意向に沿い対応する基準となる、本人の財産の確認・家族への想いを受け取る事ができる大切な取り組みですが、相続など法的手続きに活用できるものではありません。遺言書は自分の資産が少ないからといった理由で作成をためらう人がいますが、死後の相続トラブルを防ぐために重要な手続きになります。しかし、遺言書の作成は認知症など判断能力が不十分な方は作成する事ができません。遺言書は1回作成したら作り直せないものではありませんので、ご自分の意思をしっかり表せる時に早めに取り組む事が大切です。
私たちは、終末期・死後に本人の尊厳が保たれるよう、年2回の終活セミナーを開催し、エンディングノートの活用方法や相続・遺言書の理解促進等、終活に必要な取り組み・知識を広く知っていただける機会の提供を行っています。セミナーの参加者アンケートでは「いままで何も考えてなかったので、いまから少しずつ用意しようと思います。」「エンディングノートの必要性を感じました。後悔のない人生を生きていきたいです。」「実際に亡くなって家族に問題を起こさないように遺言書は書いておこうと思いました。」など、終活の重要性を理解できたとの意見やできる事から取り組んでいく、との意見が多数寄せられています。
自分らしく人生を全うするための取り組みを行う人が増えていくよう、これからも終活の普及・啓発に取り組んでいきます。
関口 和宏