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STAFF REPORT

寄り添うことから始まる権利擁護の現場

このレポートを書いた人

日常生活自立支援事業

小林 和文

5年間の民間企業でのサラリーマン生活を経て、東日本大震災をきっかけに自分にも出来る事を求め社協へ。生活困窮の相談を担当する中で、高齢者やひとり親世帯の貧困の実態や社会・地域から孤立する人たちへの支援に関わる。

私は、認知症や障がい等により判断能力に課題のある方の困りごとや生活上の手続き、家計の支援など行う日常生活自立支援事業の相談員をしています。平成11年の「地域福祉権利擁護事業」開始から23年が経ち、延べ50名を越えるの方々の生活のサポートをしてきました。

 届いた書類の内容がわからず、滞納を繰り返す。自分で光熱費の支払いに行けず、しばしば電気が止まっている。毎月決まった生活費の中で生活しなければならないのに、それが出来ない。そして、その要因は認知症や障がいなどに起因し、自分一人では困難な状況に陥いります。

 

 私が関わる相談の多くは、福祉や介護などの専門機関と呼ばれる所から相談が寄せられます。認知症の方や障がいのある方が自ら支援を求める事が非常に難しいのです。判断能力に困難を生じるという事は、詐欺や金銭搾取などにあい易いという事だけでなく、自らが困った状況である事を認識する事が難しく、また助けを求める事が難しいという事なのです。その結果が社会や地域からの孤立として更に本人を困難な状況に追いやるのです。

 今年、関わった一人暮らしの男性は、認知症の影響により、通販で全く必要の無い物を繰り返し購入したり、同じ物を複数個購入し、未開封の状態で放置されていました。また購入した代金の請求書が届いても郵便物がそのままの状態で放置され、支払いの督促が来ている状態でした。差し押さえの通知が届いた本人がパニックで何度も送付先に連絡をしていましたが、先方とうまくやり取りが出来ず、「何言ってるかわからないんだよ」「裁判所から差し押さえってどうしたらいいんだ」ほとほと困り果てた男性がぽつりと独り言の様に言ったのは、男性の支援に入る為、何とかコミュニケーションを取ろうと試みて半年後の訪問の時でした。

私が関わる方の多くは、認知症や障がい等の影響により誰かのサポートが必要です。しかし、判断能力とは別に誇りや尊厳は、誰もが当たり前に持っています。その当たり前に持っている誇りや尊厳、そして思いに耳を傾けながら、寄り添う事が大切だと感じています。

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