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STAFF REPORT

「それでもまだ、全然足りない」

このレポートを書いた人

子どもの貧困対策・ボランティア担当(平成29年4月入職)

小沼 和矢(社会福祉士)

三芳町出身。高校生の時に人と人が関わる仕事に就きたいと思い福祉業界に興味を持ち、福祉を学ぶことができる大学へ進学。在学中に塾講師の経験を活かして、三芳町社協が立ち上げた生活困窮世帯や母子家庭等の子どもたちを支援する無料学習支援教室にボランティアとして関わり始める。そこで、三芳町社協のスタッフが子どもたちや地域で困っている人たちのために、信念を持って動いていたり、どう活動すれば良いか熱い想いで話していたりする姿を見て「ここで働きたい」と思い、就職を熱望し入職。子どもの貧困対策、認知症、若年性認知症、ボランティア活動支援などを担当。

学生時代に受けた衝撃と悩み、経済的な格差が子どもにもたらす影響

 私は、学生時代に三芳町社協の学習支援教室にボランティアとして参加していました。参加している子どもは小学生から高校生です。経済的な理由で塾に行くことができない、家に学習机がない、仕事で家にいない親の代わりにいつも下の兄弟の面倒をみている、食事もしっかり食べていないと思われる、そんな状況を目の当たりにして、正直すごく驚きました。当時の自分の中にある常識が覆されたのを覚えています。そして、子ども達が置かれている現状をなんとかできないのか、このままでは子ども本人が持っている力を最大限に活かすことはできないのではないかと思っていました。特に受験を控えた子どもにとって、週12時間の学習支援教室では、塾に通うことができる子どもや、家でも勉強に集中できる環境がある子どもとの学習環境に圧倒的な格差があり、勉強したくてもできる環境にない子どもたちをどのように支えていくことができるのか悩んでいました。

入職後に見えた家庭での食事、ドレッシングをご飯にかけて食べる子ども

 入職して2年目まで、日中はデイサービスセンターけやきの家のスタッフとして介護現場に出て、夜は学習支援教室、若年性認知症の方が主体となって活動する子ども食堂を担当していました。

 学習支援教室に参加する子どもたちはいつもお腹が空いたと言います。家庭で十分な食事を食べていないのです。家で作るカレーには肉や野菜などの具材が入っていない、白米には醤油やサラダ用のドレッシングをかけて食べていました。

 学習支援教室に来た中学生に「何か作るけど、何食べたい?」と聞くといつも決まってオムライスと言います。ウィンナーやニンジン、たまねぎなど具材をたくさん入れて作ると、「具材は何も入れなくていいよ」と言います。普段、家で食べるオムライスにも具材が何も入っていないのでした。せっかくたくさん具材を入れて作ったのにと思いましたが、いろいろな食材を使った食事を家庭で食べていない状況を目の当たりにしました。

 十分な食事を食べていないのに、勉強なんか頑張れるはずがない、まずはご飯をしっかり食べて活力をつけることから始めなければいけないと思いました。

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日々感じていた悔しさ、もっとできることがあるはずなのに

 給食以外に十分な食事を食べることができていない、学用品が揃わない(用意してもらうことができない)、入浴はたまにしかしない(入浴習慣がない、ガスが止まっていてお湯が出ない)、洗濯もしない(してもらうことができない)、そのような状況で生活している子どもたちがいました。しかし、入職間もない頃は、今のような食事と勉強、生活習慣の支援ができる事業もなく、もっと何かできないのか、悔しい気持ちになると同時に、家庭以外に安心できる居場所をつくることで、信頼できる大人が周りにいていつでも話をすることができる、困りごとを相談できる環境を整え、生活全般のサポートが必要であると強く感じていました。

 

学習支援教室の強化、やっと立てたスタートライン

 子どもの貧困課題に対応できる活動を行うためにはお金が必要です。学生時代から子どもの貧困の現状を見てきて、やるべきことは理解したけれど、資金はどうすればよいのか、何とかお金を用意して子どもたちに支援を届けたいと悩んでいました。

 入職4年目、学生の頃からずっと考えていた食事や勉強、生活のサポートが可能になる助成金があることを知りました。こんなチャンスを絶対に逃したくないと、申請書類を作っている間のことは覚えてないほど必死に作りました。助成金の審査が終わって、決定の連絡が来たときには「これで学生時代からずっと課題に感じていたことに対応できる!!」と喜びが爆発したことを覚えています。

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 これまでの経験から見えていた課題に対して、既存の週1回の学習支援教室を強化し、「食事」「勉強」「生活習慣」の3つを柱とする週3日間の活動を開始することができました。手作りのあたたかい夕食と学習環境の提供、歯磨きや入浴等の生活習慣のサポートをしています

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それでもまだ、全然足りない

 しかし、生活に困難を抱えているにもかかわらず私たちのような支援機関につながっていない家庭、子どもがまだまだたくさんいます。そうした子どもたちに対応するための環境がまだまだ整っていません。私は、支援が必要と思われる子どもを誰一人として取り残すことのないような社会をつくりたいと思っています。

 また、子どもの抱える困難は一人ひとり異なり、対応もそれぞれで解決方法がわからないケースもあります。それでも子どもたちが安心して大人になっていくことができるよう挑戦を続けます。

三芳町社協 小沼 和矢

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