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STAFF REPORT

高齢者の孤立・孤独がなぜ課題となるのか

このレポートを書いた人

生活支援コーディネーター

関口 和宏

私は学生時代に福祉施設でのボランティア活動を行っていました。そこで出会った高齢者の「家に帰りたい」「私はなんでここにいるの」の声を聞き、「なぜ、望まないのに施設で生活しているのか」との疑問を解消したく、大学で福祉を学びました。そこで、地域福祉の無限の可能性を知り、社会福祉協議会に入職し、現在、生活支援コーディネーターとして地域の支え合い・つながりづくりに取り組んでいます。

『高齢者の孤立・孤独がなぜ課題となるのか』

高齢化が進む現在、多くの高齢者は様々な地域活動を行い、人との交流を通して楽しく、充実した日々を送られています。しかし、中には人との関わりを避けた生活を送られている方もいらっしゃいます。一人でいること自体は悪い事とは思いませんが、人との交流を避け続ける事で、様々な課題を抱え込み、一人では解決できずそのままの状態で生活している人がおり、時には心身に重大な悪影響を及ぼしてしまう方もいらっしゃいます。この状態が『孤立・孤独』が引き起こす大きな課題であると感じています。

『自ら命を大切にできない現状』

「セルフネグレクト」(自己放任)という言葉をご存じでしょうか。「ネグレスト(子どもの世話・養育を親が放棄する)」という言葉を最近耳にする機会も多くなりましたが、逆に自らの心・体のケアを放棄してしまう状態を「セルフネグレクト」(自己放任)と言います。私達はこれまで、この状態にある方に何名も直面してきました。共通しているのは、自分の事を相談する人がいない、つながりを持っている人が少ないことです。ゴミ屋敷状態になった家に住み、時に、動物の多頭飼いをする。食事も出来合いの物を買って食べる。そして体調が悪くても病院に行かず、最後には命を落としてしまう。このような方を社会では、ちゃんとしていない人、だらしない人、いい加減な人、といった言葉と共に「自己責任」を押し付け、個人の責任として片づけてしまう風潮があります。しかし、人間らしい生活を送れず、命を落としてしまう方を自己責任で片づけてしまう事はできません。人として尊厳を持ち、自分らしく生き、そして、自分の望む死を迎える。誰もがこの当たり前の命を全うできるよう、私達は孤立と孤独に向き合っていきます。

『孤立・孤独に対し、キーになるのは地域の住民と私たちの寄り添い』

『孤立・孤独』の悪影響に対し、私達は地域の方々と様々な取り組みを行っています。そこで大きな力となるのが地域の見守り活動です。どこにどんな状態の方が暮らしているのか、何か困り事・課題を抱えていないか。これらの情報は福祉新聞の配達による見守り活動や住民からの情報を通して私達に寄せられてきます。寄せられた情報を元に、課題を抱えた人達に私たちが寄り添い、心を開いてもらい、複雑に入り組んだ生活課題を解決するサポートを行っています。この活動は、非常に根気が必要であり、時間もかかります。

 先日来関わっている方は、当初は訪問を拒否し、なかなか会話もできない状態でしたが、何度も訪問し語り掛ける事で、少しずつ身の上話をしていただけるようになってきました。この会話からアプローチの糸口を探し、課題の解決方法を提案し一緒に模索します。時には、地域の方と一緒になり、家の片づけや継続した声掛けを続けていきます。一方で、孤立・孤独状態にならない為の活動も重要です。地域でいつでも、どんな状態になっても通える居場所を設け、人と関わる機会を多くつくり、心の健康を保つことも重要です。当初は人と関わることが不得手だった方を居場所につなぐことで近所の方と知り合いになり定期的に通えるようになった方もいらっしゃいます。

 私たちの孤立・孤独に立ち向かう活動は終わることはありません。これからも地域と住民に寄り添い、誰もが自分を大切にしながら素晴らしい生活を送れるよう、活動を続けていきます。

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